部活指導による長時間労働を解決する唯一の方法。
教員の働き方改革は「待ったなし!」の状況に追い込まれてきていますが、今次のコロナ禍の影響で、(きっと考える余裕ができたのでしょう…)これまでの教員の働き方を改めて考え直そうとする機運が、各地域の学校現場や教育委員会でも盛んになっています。
教員の長時間労働の元凶とされている「部活動指導」ですが、これまでは、放課後の部活動指導を条件とした勤務形態が主流でした。部活指導をしない教員なんて考えられないことだったのです。つまり教員の日常は、授業準備や校務分掌、保護者対応や生徒指導などで忙しく働かされ、その上、確信的に超過勤務となる「部活指導」が義務づけられていたのです。
しかし、この状況に「待った!」「あり得ない!」「おかしい!」とする声が、やっと教育の現場から上がり始め、中には、公然と部活指導を「拒否」する動きすらあると聞きます。部活指導は、それをたとえ「拒否」しようとも、その教員を咎める法的根拠はありません。そもそも部活指導そのものを(不法に)教員の勤務時間にインクルージングしていたこれまでの状況こそが「あり得ない!」のであり、それをこれからは「拒否」しようとする教員の登場は、理論的にはこれを止めることはできないでしょう。
であるならば、ここは一つ提案があります。
予め断っておきますが、部活指導が盛んな中学・高校のうち、教員による「中学の部活指導」は今後は縮小していくものであると個人的には予想しています。おそらく5年後の中学校の放課後の部活は、外部指導員が担っていくことになるでしょうし、実際には既にそのようにシフトし始めている自治体もあります。よって中学の教員が、個人的な情熱から部活指導することはあっても、全員に、しかも指導経験が全くない部活を任せるということは、これからはあり得ない…、とするのが私の感覚です。
問題は高校の部活です。特にスポーツ界では、高校の運動部は大学やプロチームとダイレクトに連携している分野もたくさんあります(野球のドラフト制度なんかですね)から、部活動がそのまま進路活動になることすらあるのです。進路活動なのですから、そこに教員がコミットするのは当然と言えば当然ですね。あまり安易に外部委託に委ねることで、大切な「教育的配慮」が欠けてしまうことが考えられますから、高校の部活動に関して、中学のそれと同じように外部委託が主流になることはあまり考えられないと私は考えています。高校では「日本の教育界の文化としての部活動」が生き残るのではないか…、そう予想しています。
しかし、とは言え、これで高校の教員の長時間労働が市民権を得てはダメです。中学であれ高校であれ、働く教員が不当な長時間労働に泣き寝入りしていては、それこそ側でそんな状況を見ている子どもたちにとっても悪影響であることはわかりきったことですからね。
つまり高校では部活動指導は今後も存在する…、しかしそれによる教員の無制限な長時間労働は何としても回避する必要がある…、この難題を克服するには次の解決策しかありません。
それが教員の勤務時間帯の二部制です。つまり大学でいうところのフレックス制度を教員の勤務時間に取り入れて、それを教員が選択することにすればいいのです。具体的には午前~昼間部で勤務したい教員は、放課後の部活動指導は受け持たず、例えば週に18コマ程度の授業を担当し(この18コマというのは現行の高校教員が受け持っている平均コマ数よりも少し多めです)、それに校務分掌や学校行事任務を集中的に請け負っていただきます。通常の勤務時間に勤務を集中することで定時(5時~5時半)には帰宅することができるでしょう。それに対して部活動を思いっきりやりたい教員は昼間~夜間部を選択して、例えば始業開始時間を11時頃と設定します。そこから授業コマ数を週に10コマ程度担当して、放課後になったら部活動の指導に励んでもらう…、そして終業時間は20時頃に設定します。
職員会議には月に一回、全教員が参加し、互いの時間帯における情報共有を行い、不都合が生じた場合は、その都度、制度を微調整していけばいいんです。ちなみにそれらの調整を行う管理職(教頭)は、2人以上が望ましいでしょう。一見複雑な制度にも見えますが、学校の教員組織形態そのものが本来から複雑なものなのですから、この程度のマネジメントができないようでは管理職は務まりません。
こういった先進的な制度は、まず私立高校からの導入がお勧めです。公立高校は、それを管轄する教育委員会(都道府県)の岩盤が「固い!」ので、教員のフレックスタイム制などという前例のない実験は絶対にしません。しかしその教育委員会も、私立高校での実績をみて学校や教育現場に悪影響が及ばない…、そう判断したら…、つまりは世間の厳しい目に晒されてもちゃんとした理論武装で対処できることが担保できるようになったら(面倒くさいですね)…、きっと追随します。
日本における高校での部活動の火を消さずに、そして部活動を通じてこれまで以上にその活動を教育に連結させようと思うならば…、教員のフレックスタイム制しかない…、そう思うのです。
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