教員がメンタル不調に陥る3つの原因

 教員がメンタル不調に陥り、休職を余儀なくされる…、そしてその内の何割かが「うつ」を発症するといったケースが後をたちません。そして、この「うつ」というヤツこそ、なってみなければわからない厄介な症状なんです。

 もう20年近く前に「うつ」を経験した私の場合、とにかくある日を境にして人とのコミュニケーションが極端に億劫になりました。電話ですら会話することが嫌で嫌でたまらないのです。集団の中にいること自体が苦痛で、すぐに1人になれる場所を探していたものです。

 当時、「うつ」などを考えもしなかった私は、その症状の原因にまったく心当たりがなかったのですが、それをどうしても解明したくて心療内科の門を何軒もたたきました。そして十何件目だったでしょうか…、そこのクリニックの医師がズバリ「あなたはうつよ」(女医です)と宣言したのです。

 っなわけないでしょ…、と食い下がる私に対して、女医は「あなたのエネルギーが枯渇してるの…、わかる?」と言いました。エネルギーの枯渇?…、意味がわからなかった私に、女医はたたみかけます。「できそうもないことまで『任せておけ!』って請け負っちゃうタイプなのよね、あなたは…。いわゆる『格好つけしぃ』ってヤツかしら…」…。これには返す言葉がありませんでした。まったくその通りであったからです。

 教員がメンタル不調に陥る第一の原因は、この「格好つけしぃ」です。間違いありません。そしてこういったタイプの教員が、意外と多いんですね。特に40代以降のベテラン教員に多い…。この年代は教員として何でもやってきているという自負心が強いですからね…、ついつい自分は「何でもできるんだ!」と思いがちなんです。周囲からもとかく頼られる傾向にある年代ですから、何か複雑な物事を解決したり、プロジェクトを無事に終了させたりするたびに、自身には万能感に近い能力が備わっているんじゃないか、って勘違いする時期なんです。

 しかしながら、人間の能力には間違いなく限度というのがありまして、どんなに頑張っても心(メンタル)の堤防が決壊してしまう…、そんなことは誰にでも絶対にありえます。問題なのは、心の堤防が決壊してメンタルがおかしくなってからじゃないと、自身の「やり過ぎ」に気づかないことなんです。だから私は経験者として、そんな「格好つけしぃ」の教員にはこうアドバイスをすることを心がけています。「それをあなたがやらなくても誰かがやりますよ。あなたじゃなければできない仕事だけを見極めてそれに注力しましょうね」と。「格好つけしぃ」は、それがどんなに小さな仕事でも、そしてそれを他の誰かに任せておける仕事でも、「よし!」と腕まくりをして自分でやっちゃう人のことなんです。つまり「私にはできない」が言えないのです。

 次に教員がメンタル不調に陥るパターンは、「格好つけしぃ」人間とは真逆の教員です。つまり教員の仕事が本当は嫌でたまらない…。できるならば生徒の前にはあまり出ず、職員室でパソコンでも打っていた方が性に合う…、そんなタイプの教員です。先生なのに「生徒の前に出るのが嫌なの?」とお思いになる方もいるかと思いますが、教員の中のたぶん2割程度は、こういったタイプです。つまり基本的なコミュニケーション不足のまま、学校という人間的カオスに職をもっているのですから、そういった人にとっては、日々当たり前のように発生する人間トラブルには、どう対処して良いかわからない…、そんでもって、例えば生徒や保護者から具体的に自身への、または自身が経営するクラスへのクレームなんかがきた時は、大抵の場合は、短期間でメンタル不調を患います。

 教員がメンタル不調に陥る3番目の原因は、実はこれが巷間言われている教員の仕事量の半端じゃない多さです。特に小中学校の教員の一日の仕事量は、ハッキリ言って常軌を失っています。しかも私が調査したところによれば、授業や教材研究、それに学級経営関連以外の仕事(各種研修や報告書、授業計画書などの提出書類)は、「無駄!」と言っても過言ではない…、つまり上司や教育委員会向けの仕事なんです。そんなブラックな仕事量に加えて部活動指導ですからね…。もう救いようがありません。

 しかしそんな状況下でも、今までにメンタル不調を患わないでやってきた教員も確かに存在しました。彼らはスーパーマンなのでしょうか? いいえ、違います。私の知る限り、彼らは戦っていました。そう、自身を支配する理不尽な職場環境とそれを指示する上司に対して少なからず「ものを言ってきた」ところの教員です。そしてそういった教員に限って、確信的に「無駄!」と思われる仕事をボイコットしてきたのです。そしてかつてはそれが学校という職場の文化でもありました。

 ところが今ではそんな教員は、ほぼ皆無です。教育委員会が長い年月をかけて「もの言わない」人々を慎重に選んで教員に仕立て上げてきたからです。よって学校の主流派となっている現代のイエスマン教員の中には、膨大な仕事量をこなすだけでギリギリの精神状態であるのに、それに輪をかけて事件やトラブルが発生しようものなら…、もうおわかりですね…、対応能力の限界から…、突然の休職を余儀なくされてしまうのです。

 以上が、教員にメンタル不調が多発するカラクリです。現行では、少しずつ学校現場の改善が進んでいるようですが、抜本的な改革をするためには、もっともっと現場の教員が「声」を上げなければなりません。黙っていても自らの職場は理想的には変われないのです。そこんところを教員は、決して甘えずに認識しなければなりませんね。