8月の教員応援セミナーで「教員とお金」をテーマとする理由

クラウドファンディングへの挑戦も中盤からいよいよ後半戦へと突入していきました。8月6日段階で86%を達成していますので、まずまず順調なのかな…、と思っていますが、これもひとえに皆様のご理解の賜です。この場をお借りして改めてお礼申し上げます。

さて、そんな中でも毎月の「教員応援セミナー」は淡々と続けてまいります。若干の持ち出しにはなっていますが、私の生活も何とか回っていますので、このままの状態で少しでもセミナー参加者の輪が広がることを期待して…、続けます。

8月のテーマは「教員とお金」です。私も社会科の教員として、特に「政治経済」なんかの授業では「お金」に関する歴史やカラクリをたくさん扱ってきました。資本主義に生きる私たちにとっては、「お金」は決して避けては通れない関門なんですね。しかしながら、この「お金」…、どうも教員の世界では、それをあまり積極的に「学ぶ」「学ばせる」ことに抵抗があるようです。なんでも教員やその教員が接する子どもたちが「拝金主義」に陥ることを危惧している…、そんな風潮が日本の教育界にはあるのです。そしてこれは私の妄想ではありません。私は今から20年ほど前に「株式学習ゲーム」というのを政治経済の授業で取り入れましたが、そのゲームの狙いは至ってシンプルでした。つまり高校生は政治経済で現代の資本主義とその資本主義における主役たる企業を学びます。その企業の90%が株式会社なのですから、当然に株式会社の仕組みを学ばせるわけです。ここで大きな壁となるのが「株式投資」という概念が高校生にはリアルに伝わらないということだったのです。

これは日本の戦後教育に問題があります。一億総中流社会へと移行していく過程で、「みんなが一緒になって豊かになっていこう!」とする暗黙のスローガンの下で、真面目に会社で働いてさえいれば安定した給料を手にすることができ、それを一生続ければ豊かな家庭、それにマイホームだって手に入れることができるんだ…、とする洗脳にも近い「教え」を学校でも地域でも家庭でも、どんどん当時の子どもたちにすり込んでいきました。つまり真面目にコツコツ働くことが唯一の美徳であり、それ以外の方法で蓄財をするなんて行為は、中流階級の側から見れば裏切り者の行為に映るんですね。よって株式投資なんていう資本主義においては当然の投資行為をする輩は、「お金の亡者」とか「がめついヤツ」として世間からは排除の対象になっていたのです。

でも考えて見ればおかしな話ですよね。日本は資本主義の国で、当然株式会社が主役になって儲けなければその従業員の給料だって上がっていきません。従業員を含めた国民がみんなで株式会社を応援して株式投資すれば、質の高い株式会社は市場で生き残り、質の悪い株式会社は淘汰されていくはずなんです。でも日本人はそれをしなかった。ではどのようにして株式会社は事業資金を生み出していたのか? それには戦後の財閥解体後に台頭してきたグループ企業内の「銀行」が大きな役割を果たしてきました。国民に代わって銀行が株式会社の株を買いあさっていたのです。それだけではありません。株式会社の側も、他の株式会社の株を相互に買い合って安定経営を実現していたのです。そこに従業員の出る幕はほとんどありませんでした。従業員(=労働者)は株式投資からは埒外に置かれ、加えて前述したような「教育」が株式投資から国民を遠ざけたのですから、この日本という国で株式投資をして儲けることができた(もちろん失敗をすることはあるのですが、日本の株式市場は概ね安定的に成長していきましたから、株式で儲けることは今ほど大変ではなかったのです)のは、銀行や大会社の役員、それに人数は少ないですけど、株式市場の動向に詳しい経済の専門家や政治家だったのです。

そういった日本の特権階級が美味しい果実を独占していた…、そんな状況が崩れたのが1990年代前半の「バブル崩壊」です。この経済的大事件にあって国民はついに気づくのです。自分が滅私奉公で勤めてきた会社は、もはや自分の生活を保障してくれる存在ではない…と。それまでの真面目さが仇となり、かえって真面目で地味な従業員ほど「リストラ」の対象となりました。だから私たちはそこから学習したんですね。自分の身は自分で守る…、そんな資本主義社会では至極当然な論理を、日本人もやっと受け入れいていくんです。

だから「株式学習ゲーム」だったのです。株式投資は、もはや一部特権階級の独占行為ではない…、これからは個人のレベルで株式会社を精査し、そこに投資する。他の先進資本主義国では当たり前の投資教育をゲームという形で私は取り入れたのでした。ところがその授業に「待った!」がかかったんです。1人の保護者からのクレームに慌てた学校当局がゲームの中止を私に求めてきました。その保護者のクレームとは「株式学習ゲームは慎重にやってくださいね」と、たったこれだけです。この「慎重にやっていただきたい」の真意については私としても同じ思いがありましたから、当然に同意します。でも学校は「中止しろ」の一点張りです。とにかく学校というところはリスキーなことからは瞬時にして逃げますからね…。つまり20年前、私の政治経済の授業は株式投資の概要を学ばせようとしてゲームを導入した、その行為そのものに大きなリスクがあったのですね。事なかれ主義を目の当たりにした私は、すっかりやる気をなくしてゲームは終了しました。そしたら今度は子どもたちからのクレームです。「なんで止めるんですか?」ってね。私は少しだけ恨みったらしく「大人の事情だよ!」と返したのでした。

ことほどさように日本の経済・金融教育は腐っています。子どもたちには常に純真無垢な存在であってほしいと願う大人は、無責任にも高校生にまで純真無垢を押しつけます。冗談じゃありません。18歳にもなろうとしている高校生に、何が純真無垢ですか! それって高校生には高校野球で純真無垢に白球を追いかけてほしいと願う、無責任な大人の独りよがりではありませんか? 高校野球にしろ、政治経済の授業にしろ、それらは誰のものでもない、そう、高校生自身ものでしょ? 野球も経済も本当は「えげつない」ものなんですよ。その「えげつなさ」を高校生に学ばせないでいつ学ばせるんですか? 無責任な大人が純真無垢な社会人を大量に輩出し、社畜と呼ばれる労働者を増産させたいのですか? 

教育の根本を変えるならば、まずは学校、そしてそこで教鞭をとる教員の「純真無垢信仰」を変えねばならないでしょう。

お願いです。頼みますから中高生に「純真無垢」を期待するのをやめていただけませんか? いいかげん気持ち悪いのです。

教員応援セミナー 「教員とお金」

日時:8月25日(日曜) 15:30~18:30

場所:X-FLOOR池袋

費用:2500円(当日お支払いください)

地図:

① 池袋西口丸井5叉路右折 ② 郵便局前信号交差点左折 ③ 1分歩き ④ 青ラインのビル7階