高校受験…、旧態依然なカラクリ。

 教育の未来プロジェクトでは、毎月、教員のためのセミナーを続けてきていますが、その傍らで、保護者向けのセミナーも地道に行っています。保護者対象のセミナーは、そのほとんどが中学や高校受験のための最新情報を伝達することを目的にしていますので、地域毎の事情を考慮して、今のところ「埼玉県在住の保護者」に限定したセミナーとなっています。

 昨日も夕方から夜にかけて「保護者応援セミナー」を狭山市で開催したのですが、この手の受験情報を入手する先の筆頭は「塾」ですから、私どものような法人がのこのこと出向いていって「セミナー」を開催しても保護者は集まらないのではないかと危惧していました。ところが様々な理由から「最新の」「正しい」受験情報を得たいと考えている保護者の方々も確かに存在していて、人数は決して多くはなかったものの(6名)、セミナーは盛況の内に終えることができました。

 その中で、やはり一番気になったのは、埼玉県民に到達している、特に高校受験に関する情報が「かなり遅れている」ということです。東京都や神奈川県とは違って、公立至上主義が埼玉県には厳然と残っているため、未だに私立高校を第一希望に考える受験生の割合が、東京・神奈川に比しても圧倒的に低いのです。確か、全受験生の17%しか私立高校を第一希望にしていないという情報が最近になって飛び込んできましたが、その数字とて過去最高の割合であるといいます。

 埼玉県は高校の進学を考えれば、実に選択肢の広い、恵まれた地域になっています。特に県の南東部や南西部であるならば、埼玉県内はもちろんのこと、通学1時間圏内に無数の私立高校が乱立していますから、例えば県内の公立高校と都内の私立高校の併願が十分に可能であり、場合によっては都内の私立高校を第一希望とした進路決定もできるわけです。子どもとのマッチングという観点で考えれば、公立・私立を問わず、選択肢が多いということは、埼玉県民は恵まれていると言っても過言ではないでしょう。

 ところが、ところが…、なんです。この県内の公立高校と都内の私立高校との併願者がとても少ない…、いや、もっと正確に言うと、県の南東部ではそれなりに都内私立への進学を考える層も多くなってきたのですが、県の南西部になると立地条件(交通条件)はまったく問題がないのに都内進学をほぼ考えないのです。中学の1学級あたり2~3人程度が都内の私立高校へ受験する程度であるといいます。まるで所沢あたりに「見えない壁」が存在しているかのように、都内からの情報が遮断されているようなんです。

 そこで私、調べてみました。本当に「所沢の(情報の)壁」が存在するのかどうか…を。それを調べるには実際に高校受験を考える中学生が学校や塾からどのような指導を受けているのか…、それがわかればいいのです。そして調べた結果、ちょっと驚きました。結論から言えば、学校や塾は、子どもたちや親に「都内の進学は考えるな!」という暗黙のバイアスをかけていました。塾の名誉のために補足しますが、都内への進学が十分に可能となる所沢地域の一部進学塾では、確かに都内も含めた全方位的な進学指導をしているところもあり、それなりに都内私立高校の最新情報に基づいた指導を行っています。しかしそういった良心的な塾は2割にも満たず、ほとんどの塾では、子どもたちの高校受験を埼玉県内で完結させるためのあらゆる手段が講じられていたのです。

 その塾の動きに輪をかけて中学校が子どもたちの都内進学を阻んでいます。もちろん公的に「阻んでいる」なんてことは絶対に認めません。しかし教育委員会に指導された教員の「言葉」によって、子どもたちは埼玉県内進学を半ば洗脳されてしまうのです。「都内の私立高校を第一希望にしたい」と言った途端、担任の先生の顔が曇り、「どうして?」となるわけです。「そのレベルの高校なら他(埼玉県内)にもあるじゃない」「遠いし、お金もかかるわよ」…。「いえ、この高校の校風が気に入ってるんです」…。「そう?ならあとは塾に相談してね。先生、都内のことはわからないから…」、という感じです。

 「都内のことはわからないから…」、この発言には問題があります。この学校(所沢地区)に赴任した教員は、当然、所沢がどのような地域にあるのかは承知しているはずです。例えば、県内で公立・私立を問わずに高校がひしめき合っている県の南東部の高校に子どもたちが通う…、その半分の通学時間で通える都内私立学校が無数に存在する地域であるところの所沢です。「わからないから…」で済むわけがないのです。中学の教員はきっと誰も認めたがらないと思いますが、埼玉県内の中学に勤務しているということ自体、すでに埼玉県の教育委員会の末端としてこどもたちの進学指導をしていることは疑いようがありません。そのスローガン(決して口にはしません。暗黙のスローガンです)とは、「埼玉県外の高校に通わせることを断固阻止する」のはずです。

 埼玉県外に子どもたちがどんどん逃げてしまう…、そのことを放置しておいたら県内の公立高校受験者が減ってしまうし、そんな公立高校の併願滑り止め校を自認する、県内私立高校の受験数も減ってしまう…、それはそれで大問題なんですね。公立はその競争倍率が低下した結果、ランクやレベルが下がることを容認しなければならないでしょうし、私立にいたっては、受験数の減少は、そのまま入学者数の減少となって一気に経営が傾いてしまうんですね。だから(誰も何も言いませんよ…)「埼玉県外に子どもたちを逃がすな!」作戦が横行するわけです。

 将来に様々な可能性をもった子どもたちの進路(進学)に、あまり大人の都合を押しつけることには賛成できません。ということに少しでも気づいていただければいいんです。そして普通に、そう、ホントに「フツウの感覚」で進学先を考えた時、当然に都内進学が、その景色の中に見えてくる…、その延長線上で高校受験を考えてあげればいいのではないでしょうか。

 とこどで、埼玉県って…、県内の公立高校に合格したら「絶対に行かなければならない」「それ(合格)を辞退してはいけない」という「都市伝説」が、未だに健在であるってこと…、ご存じでしたか? 10年も前にとっくに決着していることなのに、今でもそういった「縛り」があるのだと、子どもたちも保護者も思い込んでいるんです。

 次回は、埼玉県の公立高校の「闇」に迫ります。